フリーランス国際協力師こと原貫太氏とSocial留学代表の野中柊平による定期対談企画の第3弾。
今回は、「国際協力に英語は必要か」をテーマに対談を展開していきます。アフリカのウガンダにて、実際に国際協力に従事している原さんの視点から意見をお聞きします。
「想いがあればできる」は思い上がり
野中:弊社の運営するSocial留学では、フィリピン語学留学と現地NGOでのボランティアやインターンを組み合わせて紹介するサービスを提供しています。そこで今回は「国際協力に英語は必要か」というテーマで、原さんにお話を聞いていこうと思います。
原:なるほど。結論をいうと、英語は必須です。現地で何らかの援助活動や課題解決に本格的に携わるのであれば、やはり必須と言わざるを得ません。もちろん現地の言語を話せるのに越したことはないですが、習得の難易度は英語よりも高くなってしまう。例えば、僕の活動しているウガンダでは56種類の言語があると言われています。
野中:最近、「休学して3ヶ月間カンボジアでインターンとして何らかの課題解決に携わりたい」という相談がきたんです。しかし、話を聞くと英語が全く喋れないことが分かりました。そこで、前段階として英語を身につけることを推奨したところ「語学力がなくても想いがあれば出来ることはあるはずです」と、その学生が言うんです。こういった相談を受けることって原さんも多いんじゃないですか。
原:現地で国際協力に携わりたいけれど英語は話せないという話は、僕もたまに聞きますね。国際協力の現場に携わる上で、数あるスキルの中でも英語は最低限のスキルです。それすらやらずに現地の課題を解決したいというのは、正直理解ができません。
野中:そうですよね。「想いがあれば出来ることがある」ということを完全否定するわけではありませんが、やっぱり中長期に渡って現場に入って活動するためには、最低限の英語は必要ですよね。
原:はい。国際協力に限らず、欧米諸国で何かしらの活動をすることを考えた場合、コミュニケーションが取れないということがどんな結果を招くのか、容易に想像できるはず。なのに、いわゆる途上国での活動になった途端、それが当てはまらなくなるのは不思議です。「言葉が通じなくても笑顔や遊びで通じ合える」なんて、僕には綺麗事にしか聞こえない。
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熱い心と冷たい頭で、最良の一歩を
野中:現地とどういう関わり方をしたいかによりますよね。この話の根本の原因は、「目的がハッキリしていない」か「手段と目的の整理ができていない」状態の方が多いからじゃないかと思うんです。何か成し遂げたい気持ちや社会的意義のあることをやりたいという気持ちから、漠然とチャンスや繋がりが見つかりそうなインターン制度や団体所属の道をいきなり選んでしまう。
原:それはあるかも知れませんね。JICA元理事長の緒方貞子さんも仰られていた「熱い心と冷たい頭を持て」が大切です。「困っている人を助けたい」という熱い心を持つことは重要ですが、それだけでは何も出来ない。実際に現場で働くにはスキルが必要で、その目的を達成するためには何が本当に重要かを冷静に考えられる冷たい頭も同時に持ちあわせないといけません。
野中:ごもっともです。ただ、そこを真剣に考えていくと最初の一歩が踏み出しづらくなる側面もあるのが難しい。実際に行動に移すことは素晴らしいことですし、僕たちも今までの経験から、まずは行動してみることの大切さって痛いほど分かるじゃないですか。そもそも現場に入る前にどのくらいのスキルや英語力があれば良いのかなんて基準がないわけですし。
原:そこは難しいですね。現地で経験を積まないと分からないことは確かにありますからね。だから、行動するにしても「一歩目の踏み出し方」は重要かも知れませんね。単純に現地のことを学んだり課題を見つけたりしたいのであれば、スタディツアーやボランティア、旅など手段は他にもありますからね。
野中:たしかに。国際協力の現場においては、その「一歩目」が最前線の現場である必要があるのか、少し冷静に考えることが必要かも知れません。なぜなら、その一歩の先には受け手がいるから。
原:問題なのは、現地での活動を、自分の経験値をあげるための単なる一ステップとしてしか捉えてない人がいることですね。国際協力に興味を持ち出したころの僕自身、その気持ちが全くのゼロだったかというと自信を持っては言い切れませんが、決して忘れてはならないのは、最終的に向き合うことになるのは『人という存在』だってことですね。
野中:間違いない。まず行動することはとても素晴らしい。ただ、その挑戦の向こう側には大勢の人やたくさんの積み重ねがあることを常に意識した上で、「一歩目」を行動に移すことが肝心という結論ですかね。
原:はい。とにかく、その挑戦自体は全力で応援しますが、熱い気持ちで飛び込めば何とかなる世界ではないっていう現実があることは知っておいて欲しいかな。
溢れる情報の中でやるべきこと
野中:こうして考えてみると、国際協力に興味がある人に一歩目の踏み出し方や情報収集の仕方をもっと工夫して欲しいと同時に、僕たちのような経験者は彼らにより良い一歩を踏み出すためのサポートや環境を整えることがまだまだ出来てないんだと自戒します。
原:そうですね。情報を提供している側も、情報に偏りがないようにする努力は必要だし、僕の取り組んでいきたいところです。例えば、冒頭の学生が国際協力に興味が出てきた段階で、なんとなく「それならカンボジア」と思考することについても、情報の偏りに起因する気がします。
野中:仕方ないことなんですが、カンボジアは特に有名な映画があったり、本が出ていたりと、国際協力や負のイメージに関する露出が多いですもんね。当然、あったことに蓋をせず伝えていくことと、それを学ぶことは別の次元の話として必要なのですが、現在のカンボジアは知られてない魅力や可能性が腐るほどあります。
原:じっとしていても情報を取りやすいということの裏には、そういう側面もあるって意識したいですね。とはいえ、どの地域の何に関わることになるのかは、最終的にはご縁でしかないという風にも思います。なので、国際協力に興味がある人は1ヶ月でも2ヶ月でもいいので、完全にフラットな状態で現地を見にいくことを強くお勧めします。
野中:そうですね、これから国際協力に携わる方は、最初から受け手のいる最前線ではなく、旅などを通じてフラットな視点で現場を見るというのは、良い判断かもしれませんね。
原:僕もウガンダに携わるようになる前に、旅で現地団体を訪問して知見を広めた時期がありますし、その過程で今回のテーマである「語学力」には必ずぶち当たるので、どこかで必ず自分ごとになりますからね。
野中:うんうん。では、そろそろ全体をまとめると、国際協力において英語は最低限のスキルである。現地は経験を積むための練習場ではない。とはいえ、考えすぎず行動してほしいという想いもあるので、一歩目の出し方を”冷たい頭”で考える。そして、僕たちはそういった人たちがより良い一歩を選択できるように、質の高いサポートや偏りの少ない情報を提供することに尽力する、ということですね。
原:僕たちが共同で実施しているコラボ企画も、どんどんクオリティを上げていかないといけませんね。
野中:ありがとうございました!
対談裏話
記事の編集を終えたソーシャル留学編集部。最後の写真挿入の段階で、今回の記事用に撮った横浜での対談中の写真を紛失したことに気づきました。しかし、原さんはすでににウガンダに。ちなみにウガンダまでの距離は11339km。素敵です。
困り果てた挙句、原さんにお願いして現地から対談してる風の写真を送ってもらいました。写真の原さんは気持ちが乗って話してる風ですが、その目線の先、誰もいません(笑)。今回はそんなウガンダ産の写真と共にお送りいたしました。