「発信は次のステージを見てる」原貫太が語る国際協力と情報化社会

原さん対談 アイキャッチ 国際協力

フリーランス国際協力師こと原貫太氏とSocial留学代表の野中柊平による定期対談企画の第8弾。

 フリーランスとして国際協力に携わる原貫太氏と、Social留学の代表野中柊平の対談。感染症拡大によって行動が制限される中で重要性が増している情報発信と受信に焦点を当てて議論して頂きました。国際協力や開発に携わる人も避けては通れない内容です。

発信の次のステージ

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野中:本日も宜しくお願いします。移動が制限されている中で「今、できること」について議論する度に、情報を発信することの重要性に行き着きますよね。今回は、情報の「発信」や「受信」に焦点を当てて、話を進めていきたいと思っています。

原:なるほど。最近、僕はYouTubeに力を入れています。なぜかというと、僕が情報発信をする上で次のステップとして考えているのが、潜在的に関心のある層や国際協力にあまり関心のない層に、如何にして情報を伝えていくのかということだからです。

野中:原さんのTwitterやブログは、国際協力に携わっている方の中では、多くの人に見られてますよね。そこでリーチ出来ていない層にも情報を届けていくことを、今の課題として認識していると。

原:そうです。YouTubeはプラットフォームの性質上、新規の人にアプローチしやすいという利点がありますし、特に若年層に有効なツールだと感じています。国際協力にそれほど理解のない人にも情報を届けるため、噛み砕いて伝えることや、気軽に国際協力や社会問題を考える場を用意することは、国際協力の裾野を広げるためには必要なアクションです。

野中:そうですよね。国際協力に携わっている人は、そこを本気で考えなければならない時期だと思います。「一部の良い人がやってる」みたいなイメージは終わりにしたい。Social留学でも語学留学やツアーなど、比較的入りやすいところから社会貢献や国際協力に触れてもらいたいという想いで運営しています。

原:入り口を広げていくのって大事ですよね。国際協力という言葉を知らなくても、なんとなく世界や社会のためになる仕事をしたいと感じている人たちに、一歩踏み込んだ情報を届けたい。そして、その「なんとなく」をより明確にしてもらうため、わかりやすく情報発信することが僕のYouTubeでの使命だと感じています。

国際協力を当たり前に

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野中:市民社会をいかに巻き込んでいくかというところを考えると、YouTubeを含め、猛スピードで移り変わる発信ツールをきちんと学んで、上手に使っていかないといけない。自戒を込めて、ジェネレーションギャップで終わらせてはいけませんね。

原:情報を切り取ったり、噛み砕きすぎたりすることの弊害についても考慮しなければならないので、線引きが非常に難しいところですけどね。ただ、やはりYouTubeを真剣にやってみて感じたことの一つが、国際協力にすでに関わっている人の「普通」と、そうではない人の「普通」の大きな乖離です。

野中:あー。それは頭で分かっていても、いざ発信したり事業をやったりすると、嫌というほど突き付けられる現実ですね。留学も、渡航してしまえばなんてことないことが殆どだけど、渡航前の人からすれば凄く遠い世界のことだと思う。

原:そう。だからこそ、国際協力や開発という言葉を意識しなくても、情報が伝わっていく状態にならないといけない。もはや、国際協力やボランティアや社会貢献という言葉を使わずに、如何にして伝えるのかということを考えていきたい。

野中:理想は、国際協力をやってる人が当たり前にマスに露出しているような状態ですよね。イメージでいうと、国際協力のオピニオンリーダーたちが当然のようにバラエティとかに出ている感じ。しかも、決して国際協力だけを論じるために出演しているわけではなく、本当に当たり前のように存在している状態。

原:著名人が国際協力をやるのか、国際協力の人が著名人になるのか、どちらでも良いのですが、とにかく国際協力や社会貢献があたりまえのように浸透している世の中にしてみたいですね

情報に飲まれないために

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野中:ここまで、発信する側の話をしてきましたが、受信する側にも焦点を当てましょう。裾野を広げるために、発信者は多少エンタメによせた情報発信をする場合もあると思うのですが、そういうものが増えた時に、情報を受信する側もそれを入り口にして学んでいく姿勢が大事だと思うんですよね。

原:本当にそうで、きっかけとして簡単なところから入ることは良い流れだと思うのですが、やはり難しいことや複雑なことにはそれなりの理由があるので、それをきちんと理解できるように徐々に難しい事例を学ぶことや、本や論文といった媒体で情報を得ることにチャレンジする姿勢は受け手にも必要です。

野中:そこがないと、エンタメによせたり短い文字数や時間で伝わるようにデザインされたりした情報の内容は、ただ消費される情報になってしまいがち。

原:そうそう。情報がオープンな時代だからこそ、大量に流れてくる情報を単に受け取るのではなく、そこから自分で必要な情報を掴みにいき、さらにそれを精査していくということが大事ですね。
近年は、その姿勢の有無に起因する情報格差が広がっていると感じますね。そこで搾取的な構造が成り立ってしまっている状況も目にします。

野中:全てのサービスや行為に当てはまる話だと思います。プログラミング自体は決して悪いものではない前提でプログラミングを例にとると、プログラミングを教えることでお金を生んでいる側は、プログラミングを志している人たちのマーケットにだけ情報を伝えようとすると規模が小さいし、いずれシュリンクしてしまうので、その周辺のマーケットにもアプローチします。

例えば、「場所に囚われずに働きたい人」だったり、「手に職をつけたいと思っている人」ですね。所謂、潜在層です。その潜在層に刺さりやすいように、意図的にデザインした情報がたくさん流れた結果、誤解して受け取った側が搾取されているような構図ができてしまっていることが往々にしてある。

原:「どんな情報か」ということより、「誰が発信している情報か」ということが重要視されている昨今の状況は、その危険性を孕んでいますよね。情報量に格差があるというより、情報を判断する力に差が出てる印象があります。

野中:それって意外と一次情報の差かもしれないと思っています。経験格差みたいな。自分が経験したことだと、いろんな角度からその情報を判断できる。情報化社会によって、何となく知った気になってるけど、分かってはいないという状況が増えていることが原因かもしれませんね。

原:あー、確かに。それはあるかも知れませんね。野中くんは、どんなことに気をつければ良いと考えてますか?

野中:事実と意見を区別することですかね。拡散力のある人の発信が「事実」なのか、その人の「意見」なのかを自分で検証することが大切。あとは、SNSなどではその情報に対する世間の反応も多角的に見ることができるので、その辺りも含めて精査することですかね。

原:そのプロセスは、僕もたしかに無意識でやっていることかも知れません。国際協力とは少しズレているようにも聞こえますが、国や人種、文化を超えて活動する国際協力の世界では、一つの情報を多方面から分析する力は、意外と必要なスキルかもしれませんね。

野中:ありがとうございました。

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