「自然にガッツポーズがでる人生を。」DREAM-Hack代表 菅勇輝

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特定非営利活動法人DREAM-Hack代表の菅勇輝さんにインタビューしました。
新卒で入社した企業との仕事や関係性を継続しながら、団体の代表として日本とネパールを行き来して活動するという新しい国際協力の形を実現している菅さん。

菅さんがDREAM-Hackの掲げるビジョンや立ち上げた理由、分岐点となった印象的な出来事について語ってくれています。

現地のニーズは関わる全員の夢

 

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– それではよろしくお願いします。まずは、DREAM-Hack についてお聞きします。現在の活動について教えてください。

2018年の6月に立ち上げて、現在は主にネパールで活動しています。後発開発途上国において自らの力で夢を実現できる環境がない、もしくは少ない人たちに対しての開発援助に取り組んでいます。しかし、進行中の事業が現時点で11個あり、例えば「貧困」や「教育」など、分かりやすいカテゴリーに絞った活動をしてないので、口頭での説明が難しいです。

 – 去年に立ち上げて、すでに10以上もの事業に関わっているとは驚きです。では、個別の事業内容はDREAM-HackのHPを見ていただくことにして、団体の軸やヴィジョンみたいなものはありますか。

 「夢」というのが前提にあります。現地のニーズを夢として捉えていて、夢に向かう人たちや夢をサポートしている人たちが、ワクワクできる環境を作りたいという想いで活動しています。

   「ニーズは夢」いいですね。活動を拝見していると、面白い立ち位置で国際協力に携わっておられる印象です。

 コネクターという感じですね。「人」と「お金」と「現地のニーズ」を組み合わせて、みんなの夢を実現していくための「つなぎ役」といった役割です。

 DREAM–Hackの国際協力との関わり方

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–  なるほど。Social留学と非常に近しい感覚で活動に取り組んでおられるような気がします。その「つなぎ役」という立ち位置について、もう少し掘り下げてお聞きしてもいいですか。

 現地でプロジェクトを立ち上げて直接的に開発に携わるケースもあれば、現地団体の活動のバックアップもします。また、大きなビジョンを実現させるためには僕らだけでやっていても仕方がないので、国内で人材育成にも取り組んで、間接的に国際協力に向き合うこともしています。

–   現地での直接的な活動と同時に、国内で人材育成にも力を入れていらっしゃるんですね

ドリームキャラバンやドリームキャンプと名付けて行なっている、スタディーツアーやキャンプが人材育成の活動です。そこで得た事業収益で現地での支出も賄っています。人材育成は個人の内面の成長の部分が大きく、成果が見えにくいので補助金の申請などには苦労するのが実情ですが、国際協力について考え、行動する人材の輪が少しでも広がってほしいという想いでやっています。

 – 確かに個々の成長や心の変化は成果が計りずらそうですが、有意義な取り組みだと思います。Social留学で運営しているオンラインコミュニティにも通じるところがあります。人材育成に取り組んでいて印象に残っている出来事はありますか。

 スタディーツアーで人身売買のシェルターに訪れた女の子が、帰国後ネパールの性的被害に遭った女性たちにファッションを通して心のケアを行う「椿プロジェクト」という事業をクラウドファンディングを活用して立ち上げたことです。

 – 素敵ですね。着実にDREAM- Hackの想いの輪が広がっていっている感じがします。

 出会った当初は、あまり積極性がない印象だったので驚きました。国内での人材育成の活動がはじめて芽吹いた事例ですね。国際協力に興味のなかった人が自発的に考え、行動に至った事実を受け、これも国際協力の一つのあるべき姿なのかなと思いました。その子は、JICAに就職が決まっています。

学生時代の大切な経験

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– では、現在の活動に至るまでの、菅さんの個人史にスポットライトを当てていきたいと思います。活動の動機やモチベーションはありますか。

 学生時代にネパールに小学校を建てるという目的で、団体を立ち上げたのが始まりです。当時の動機は、「世界を変えたい!」とか「やりがいのあることをしたい!」という、ごくごくありふれたもので深い意味はなかったように思います笑。

 – 私たちも入り口はなんでもいいと思っていて、一度の失敗や成功どうこうではなく、その結果を自己意識のフレームの中でどのように解釈し、次に繋げていくのかが大切ですよね。

 そう思います。実は学校建設は失敗に終わったんです。問題が表面化し、緊急でネパールに訪れて仲介NGOと話し合いましたが、理由をいくつも並べられた上で「学生では限界がありますね」と、はっきり言われました。

– プロジェクトが途中で頓挫してしまったということですよね。納得のいく内容だったんですか。

納得できせんでした。数年団体を運営してきた今となっては学生団体では時間がかかったり、継続性がなかったりと一緒にプロジェクトを進めるのは大変だっただろう、と理解できる部分もあります。しかし、頓挫した原因はこちら側に一方的な非があるようなものではなかったですし、1年半をかけて220万円を現地に送金していた事実があったので。

– 大金じゃないですか。当事者ではないので断言はできませんが、無責任な対応に感じますね。

この出来事はDREAM-Hackのあり方にも影響を与えています。学生だからとか社会人だからとかNGOだからということは関係なく、関わる人にはそれぞれの役割がある。だから、一度手をつけたら誰かの想いをきちんと形にすることは、とても大切なことだと思っています。

日本と海外を翔ける広告営業とNPO代表理事の二足のわらじ

– その経験がDREAM-Hackが活動する上で一つの軸になっているんですね。大学卒業後はどのような道を選びましたか。

 新卒でベクトルというPR会社に入りました。小さな会社ではありませんが、自分で申し出て特例として業務委託という形でDREAM-Hackと同時並行で仕事をしています。このスタイルを持続できているのは会社の理解がとても大きいです。

– 素敵な会社ですね。新入社員として働くことと、団体の運営を両立することは大変なことだったと思います。

1年目は大きく変わった日常に適応するのに苦労し、仕事だけで精一杯でした。転機は入社2年目に、平昌オリンピックに出場している高梨沙羅さんを観ていて、競技中に彼女が見せたガッツポーズを目の当たりにして僕も飛ぼうと思ったんです。

 – 急ですね笑。そのガッツポーズがそんなに魅力的だったんですか。

 溢れ出たようなガッツポーズだったんですけど、それ決勝じゃなかったんです。ご自身が4年間やってきたことに対して自然に出たものだと感じました。そのときふと、月〜金でこの生活を送っていて彼女のようなガッツポーズは出てこないなと思って。なんの前ぶれもなく決意しました。

 – 何気ない日常にきっかけが転がっていることもある。なんか、良いですね。会社に特例での働き方を直談判するには、2年間の相当な努力と結果と勇気が必要だったと思います。また、求められるものはより高いものになったのではないでしょうか。

 今の悩みはそこですね。どっちのことにも必死です。この働き方になってはじめて自分というものの市場価値を生々しく意識しましたし、自由だからこそ時間のマネージメントが難しいです。 

自分の軸をもって国際協力に関わろう

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– 珍しい国際協力の関わり方なので、興味深いです。最近インタビューをさせていただく海外で活躍されている若き活動家の人たちは、本当に多角的な視点とアプローチで社会問題に立ち向かっていると感じます。

 そうですよね。最近は国際協力の関わり方にも選択肢がたくさんあります。もっと国際協力が当たり前になってほしい。

– DREAM–Hackがニーズや問題解決を「夢」に置き換えてリデザインしていることにもその願いが含まれている気がします。国際協力というか、助け合いがもっとカジュアルになって欲しいですね。

 はい。ただ、組織に属するような場合は自分の軸をみつけた状態で、それを実現するために最適な組織やカテゴリーを選ぶことが迷いなく進んでいける方法かなとは思います。JICAや協力隊を名前をよく聞くという理由で軸もなく選ぶと大変なことが多いと思います。

 – それはご自身の経験から導き出されたことでしょうか。

学生の頃から団体を運営していて感じたことです。団体のヴィジョンが自分の目的になってしまうと、個人的な問題や苦難に直面した場合や組織が終わったり組織から離れてしまった場合に、そこでパッタリと全てが終わってしまうというようなことを、たくさん見てきました。

– 確かに、選択肢が増えた今だからこそ完全に国際協力との関わりをやめてしまうのではなく、関わっていく方法はありますよね。自分の軸がある上で所属していれば組織を離れても目的は変わらないので別のアプローチで継続できる可能性は高い。

国際協力でもみんな心を惹かれることや関心があることはそれぞれ違うと思います。それをみつけた上で最適な組織に所属することが大切だと思います。そのため、DREAM-Hackのスタディーツアーは細かい分類はせず、本来であればいろんなカテゴリー属する地域や人のところにお連れし、自分の心が揺れたのはどこかをまず真剣に考えてもらう形を取っています。

– 多角的に問題をみて琴線に触れたことを軸にして活動してもらえば、目的と手段が入れ替わらずにすみますね。

はい。そしてこちらから全て提供するのではなく、それぞれのやりたいことが実現できる場所がきちんとあれば、継続性を持って自主的にやりたい分野でやりたいことができるので、そういった受け皿としてもDREAM–Hackは存在意義があると思っています。

– ありがとうございいました。最後に何か一言お願いします。

DREAM-Hackは国際協力活動に従事するすべての方を応援しています!何か今の現状に踏みとどまったり、新しいチャレンジをしたいと考える人がいれば僕たちはいつでもそこにいます。一緒に世界を変えましょう!


 

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