フリーランス国際協力師の原貫太氏とSocial留学代表の野中柊平の対談第2弾。
・フリーランス国際協力師、原貫太とは何者か。
・原貫太が語る国際協力の「今」と「現場のリアル」
「国際協力を仕事にするために必要なこと」についてふたりの話が展開した前回の対談。その中には国際協力に限らず、若者が自分のやりたいことを見つけるための方法や、やりたいことをやるための心構えに関するヒントがありました。そこで今回は「人生の方針を決める」「やりたいことをやる」ために必要なことは何か?という観点に立って語っていきます。
「やりたいこと」のハードルを高く設定しないこと
野中:よろしくお願いします。本日は前回のインタビューの中で、もっと深く聞いてみたいと感じたことをお聞きしていきたいと思います。
原:わかりました。よろしくお願いします。前回のインタビューで気になった部分ってどこでしょう。
野中:多くの若者が人生の方針を決めきれず悩んでいることに対して「未来のことを考えすぎず、シンプルに自分が今やりたいことをみつめて行動すること」という趣旨のアドバイスがあったと思います。
非常に共感する考え方だったんですが、短期的にですら何をすればよいのか分からない方もいるのが実状ですよね。
原さん:なるほど。前回のインタビューでは過去に執着せず必要以上に未来を考えすぎず、その時にやりたいことに専念して下さいと話したと思いますが、実際のところ僕も昔からそんな生き方ができたわけではありません。
野中:そうですよね。以前のインタビューで、病気を経験したときにアドラー心理学を学んだことから、そういった考え方をするようになったと言ってましたよね。
原:そうそう。あの発言はアドラー心理学を学んで体現している現在の僕だからこそ出てきたものです。なので、進路を決めかねていた当時の自分に「今やりたいことをやれ!」と言っても、おそらく響かなかっただろうと思います。
つまり、受け取る側の状況や状態によって言葉の意味や重みは変わってくるので「今やるべきことが何か」を考えすぎて慎重になりすぎないことが大事です。
「今やりたいこと」のハードルをそんなに上げる必要はない。
休学中のアフリカで人生が動き出した
野中:なるほど。「やりたいことが何か」に真剣になりすぎて視野を狭めないことも大切ですね。
悩みながらも行動していった先に経験を積み、病気やアドラー心理学を体験した結果が冒頭のアドバイスに繋がったとすると、むしろそれ以前の原さんがどのようにして悩みを抱えつつも行動していったかというところにヒントがある気がしますね。
原:その観点に立って考えると、アメリカ留学から帰国した後に大学を休学したことが僕にとって大きな転機になりました。
4年時にアメリカに留学したので、卒業に5年を要することが決定していました。帰国後に半年間休学して京都に本部がある認定N P O法人テラ・ルネッサンスでインターンしました。最初は日本の事務所で1ヶ月間、その後ウガンダで2ヶ月間活動しました。
野中:まだ現在のように考え方や進路が固まってなかった時期だと思いますが、休学した理由や選択した時の心境はどういったものでしたか。
原:実はアメリカに留学中に、1人でウガンダに3週間ほど行ったんです。旅行のような形でしたが、どうせ行くんだったらと思ってテラ・ルネッサンスがウガンダでやっている元子ども兵の社会復帰施設を訪問させてもらったんですよ。
そのときに元子ども兵の方から聞いた従軍中の体験談があまりにも壮絶で、この問題に対して自分にできることを今やりたいっていう想いが生まれて、そこでインターンすることを決意し休学することにしました。
野中:なるほど。休学前の段階で、最初に3週間もウガンダに行こうと思った理由はなんだったんですか。
原:それは大した理由ではなくて、冬休みだったので元々はアメリカ縦断しようかなと思ってたくらいです。ただ、当時から国際協力には関わりたいと思っていたのでアフリカには早いうちに足を運びたかった。
というのも、それまでの大学生活で児童労働やストリートチルドレンの問題に関わってきた過程で子ども兵にすごく問題意識を持っていたからです。
野中:自分の興味や問題意識を行動にうつしていったという感じですね。インターンで身についたスキルはありますか?
原:言語化する力ですね。インターン業務としてやっていたわけではないんですが、現地の活動や感じたことを毎日ブログに書いていく過程で、自分の内側をきちんと言語化するスキルと文章力がつきました。
ネットはあったので、さらにそれをマネタイズする方法についても独学で身につけました。ウガンダの夜は危ないし不便なので毎日部屋にいて、本当にやることがなくて時間がありましたね〜。
休学という選択肢に思うこと
野中:ということは、本当に現在やられている仕事のスキルは休学時のインターンした中の時間を利用して基盤になるものが作られていったっていう感じですね。
原:そうですね。休学して良かったことが2つあって、ひとつは集中して自分のスキルを磨けたこと。
はじめからスキルを磨こうと意図したわけではなかったけど、やっぱり何かしらハマるものが見つかったことは大きいですね。僕の場合はブログで文章を書くことだったわけですけど、そこにすごく集中できた。
野中:もうひとつは何ですか。
原:自分の生き方や進路を真剣に考えたことですね。テラ・ルネッサンスの職員の方と毎晩のように話したり、難民の人たちの話を聞く経験がとても大きかった。
それを大学の宿題やアルバイトなどの忙しさに追われずに、全力で毎日自分のやりたいことだけに集中できる環境にいたからこそ、日々の出会いや感情に本当に真剣に向き合って「自分は何のためにこれから生きていくのだろう」とか「自分の人生はどうあるべきなんだろう」とか色々考えた。
日本とはまったく違う状況に身を置いたからこそ考えざるを得なかったし、考えさせられましたね。
野中:逆に休学のデメリットだと思う部分はありますか。
原:休学のデメリットはぶっちゃけないと思うんですよ。
いくつかの大学は休学費用がめちゃくちゃ高いと耳にしますが、それは減額を求める署名運動など問題提起がなされているし、僕の卒業した早稲田は半期で5万くらいだったので資金面はそこまで問題ではなかったです。
就職活動にしても、休学して一年遅れたところで、その期間について自分の言葉できちんと話すことができれば全く問題にならないと思います。
正解を求めず、休学生活を自分で正解にすること
野中:最後に休学する上で大事なことを教えて下さい。
原:「攻め」の姿勢で休学することが大事ですね。
「まだ就職したくないから」とか「日々の生活がなんとなくつまんないから」とか、そういった「逃げ」の姿勢ではなく。
そういう理由で休学して結果的にうまくいく人もいることは否定しないけど、自分の時間を大切に生きるってすごく大事なことだから、どうせ休学するのなら攻めの姿勢でいて欲しい。
つまり、自分のやりたいことをとことん突き詰めるとか、自分が仕事にしたいことを探すとか、そういうポジティブな姿勢で休学することが大事ですね。
野中:そうですよね。間違いないと思います。
原:休学するにせよ就職するにせよなんにせよ、進路を決めるときに選択する時点では正解はなくて、自分で選んだ道を正解にするしかないんだと思います。
野中:みんな選択するときに正解を求めるから悩むんでしょうね。
原:そう。正解は自分の手で作る。どんな進路に進んでもそれを正解にできるように行動するしかないってのが進路の悩みを解決する一番の方法であり、心がまえってことですね。
いずれにせよ国際協力を仕事をしたい学生は、卒業までにスキルと経験を積んでおくことは大事です。そのために一つの選択肢として、休学を活かすのはありだと思いますね。
・フリーランス国際協力師、原貫太とは何者か。
・原貫太が語る国際協力の「今」と「現場のリアル」