原貫太が語る国際協力の「今」と「現場のリアル」

国際協力

フリーランスとして国際協力に携わっている原貫太氏へのインタビュー第二弾。今回はSocial留学のスタッフとの対談形式で、原さんが現場で感じている課題や国際協力のあり方について語っていただきました。国際協力において国や時代をこえて変わらないものと、時代の変化やグローバル化によって変わってきているものが見えてきます。

ウガンダでの活動と発信という現代を象徴するキーワード

野中:前回は「原貫太とは何者か」をテーマに、原さんの国際協力への関わり方についてお聞きしました。第二弾は、実際に現場で活動して感じることについて、対談に近い形式でざっくばらんに話していきたいと思います。現在はアフリカのウガンダで活動していらっしゃいますよね?

原:はい。ウガンダ北東部のカラモジャというところで、現地のパートナーと手洗い指導や紙芝居を使った公衆衛生の啓発活動、また今年9月からは女子児童に対する生理用品支援のプロジェクトも開始しました。基本的には、現地のパートナーが主体性をもって取り組んでいる活動をサポートするのが僕の役割です。

野中:なるほど。原さんが何かをゼロから作り出すというよりは、活動のサポート役なんですね。その上で、国際協力をテーマにして様々な活動を行い、その一部が仕事にもなっているというイメージですよね。

原:はい。国際協力だけをやっているという感じではなくて、国際協力をテーマにいろんな働き方を掛け合わせるイメージで活動しています。真剣に国際協力に向き合っていない訳ではなく、国際協力をテーマにいろいろ掛け合わせることで、直接関係がないことであっても価値を生み出していくということです。

野中:国際協力に直接関係なくても掛け合わせによって価値が生まれる…面白いキーワードな気がするので、もう少し詳しく聞いてもいいですか。

原:例えば、僕は国際協力をテーマに発信していますが、その発信の方法論やフリーランスとしての働き方のノウハウは他の分野にも活用できるので、そういったスキルやフリーランスとしての働き方をシェアすることも僕の仕事の一部です。

野中:なるほど。現場での活動に取り組みながら、他分野の活動も掛け合わせてお仕事されているということですね。その働き方の軸は主に発信活動だと思いますが、何か思うところはありますか。

原:以前、ツイッターが炎上したんですが拡散されたことによって、「こういう人がいるんだ」とか、「こういう働き方もあるんだ」とか、結果的にはたくさんの人に自分の存在を伝えられたので、色々大変ではありますがポジティブに考えています。個人の影響力はかなり増しましたしね。

現場で感じた国際協力のあり方

野中:それでは本題に入っていこうと思います。原さんが実際に現場で感じていることを聞いていきます。冒頭でおっしゃっていた、「基本的には、現地のパートナーが主体性をもって取り組んでいる活動をサポートするのが僕の役割です。」という言葉には何かこだわりが感じられましたが、いかがですか?

原:僕は現地の問題はそこの人たちで解決するのがあるべき姿だと思ってるんです。アフリカは歴史的に外からの介入が強すぎたが故に、自主性が失われてしまっている現状があります。

野中:歴史的背景も関係してくると。今も侵略はなくても経済的な面での外からの介入は大きな影響があると思います。

原:はい。グローバル化がどんどん進んでいますが、農業でいう地産地消のようなイメージが国際協力にも必要だと感じますね。すでにアフリカの若者の中でも志を持って立ち上がった人たちが現場にはたくさんいますから。逆に僕が全部やってしまうと、独りよがりになってしまう可能性が出てきてしまう。

野中:内側から出てくるニーズや問題意識は大切ですよね。押し付けにならないようにするには、その風土や文化で育った人たちの視点からみえる課題やアイディアが重要だと思います。ただ、それでは解決できない問題があったり、問題を問題として認識できていないなんてこともありますよね

原:そこに国際協力の意義があると思っています。助けてあげるというマインドではなく、お互いの強みを生かして改善していく。外から来た人しか知らない情報や、外から来た人でしか気づけない問題があるのもまた事実です。彼らだけで解決しにくい問題は実際に存在するので、そこは外から来た人間が外から来たなりの強みを生かし、彼らがポテンシャルを十分に発揮できるだけの環境を整えるというのが大事ですね。

野中:バスケットボールのプロリーグを立ち上げる時に、サッカーのJリーグの川口チェアマンに入ってもらった、みたいな話ですよね笑。では、どういった意識を持って現地のパートナーと接しているんでしょうか?

原:自分の強みを活かして、現地のパートナーの力が発揮されるのを妨げている制約を取り除いていくことですね。具体的には、僕のWebメディアのスキルや情報発信力を活かし、彼らの想いを拡張することで、プロジェクトのファンドレイジングに繋げています。あとは、やはりまだ経済力の違いがアフリカと日本の間にはあるので、日本で得た収益や寄付を現地の活動に使っています。

新たに顕在化してきた問題

野中:国際協力への関わり方も新しくなっているように、新たな問題やこの時代だからこそ顕在化している問題があったりするんでしょうか?

原:うーん…日本でいうところの相対的な貧困みたいなのはまだ少ないですが、単純な例を挙げると、都市部の治安が悪くなったことですね。大半の人々の生活は変わらないのに、外からいろんなものが入ってきて物価や地価が上がってしまっているのが原因だったりします。

野中:近年は支援が必要な地域の傍らで、大型のビジネスが生まれたりしていますもんね。

原:そういう影響でいうと、マニラとかを見ていてもそうですが、農村などの問題より都市部のストリートチルドレンとかの問題の方が難しいなとか思うことがあります。大人の思惑やビジネスが入り込んだりしている分、いろんなことが絡み合っちゃっているから。ときには政治家が絡んでいたりしますもんね。

野中:農村部の絶対的貧困と質の違う貧困がありますよね。確かに治安や都市部のストリートチルドレンの問題は、グローバル化が急激に進み、大量の情報と物質が流通する今の時代ならではのギャップによる問題の顕著化、複雑化かもしれません。

原:SDGsでNo one will be left behind(誰一人取り残さない)と叫ばれていますが、やっぱり取り残されている人は増えていきますよね。

発信者として、受け手とどう関わるか

野中:ここまでお話を伺ってきて、Social留学の発想と共鳴する部分が大きく嬉しく思います。私たちはフィリピンの留学業界で生まれたお金をきちんとフィリピンにも還元するために、留学費用の一部が国際協力に携わる組織に寄付される仕組みを作りました。

原:なるほど。確かにそれも国際協力への新しいアプローチかもしれません。ちなみに、Social留学の還元の仕組みは日本人の運営しているソーシャルセクターが対象ですか?

野中:コミュニケーションやお金の流れが円滑にすむように、第一段階としてはそのようになっています。これからは既存の提携組織の方々と協力しながら、現地の団体との提携も進めていきます。

原:素晴らしいと思います。

野中:そして原さんもおっしゃっていた独りよがりになってしまわないように寄付と並行して、現地で長年活動されているソーシャルセクターの方々の目線での課題や制約を僕たちの強みを活かして解決していこうと試みています。

原:なるほど、関わり方の姿勢も近いものがありますね。では、もう一つ質問なんですが、寄付が一つのゴールであるとは思いますが、送り出す人に対してどう変わってほしいとかそういうゴールは設定していますか?

野中:学びの入り口はどこからでもいいよねというのが基本的なスタンスなので、現地を訪れてもらうのが一つ大きなゴールではありますが、何かしら持ち帰って自分なりの課題や気持ちをそのままにせずに整理、あるいは行動してほしいですね。

原:現地に行ったあと継続して活動することは確かに国際協力や留学の課題かもしれませんんね。

野中:そして継続して関われる場所や情報を得ることができる仕組みをこちらから用意したいなというのは常々思っています。具体的には、オンラインで繋がれる場所をSocial留学では提供していて、帰国前・滞在中・帰国後にどこにいても継続して現地に関われるような仕組みを作りました。

原:なるほど!僕もオンラインでチームを組んでいて、遠隔で日本で国際協力や僕の活動に関するイベントをやったり、そこでの売り上げを現地に使ったりしています。

野中:ますます似ていますね。一緒に何かやりませんか?海外に行く人たちに、入り口から出口までデザインしたプログラムなんてできれば良いですよね!

原:是非よろしくお願いします。それは、またおって練っていきましょう。

原貫太(はらかんた)。
1994年生まれ。
フリーランス国際協力師。早稲田大学卒。

フィリピンで物乞いをする少女と出会ったことをきっかけに、学生時代から国際協力活動をはじめる。
これまでウガンダの元子ども兵や南スーダンの難民を支援してきた。大学在学中にNPO法人コンフロントワールドを設立し、新卒で国際協力を仕事にする。

出版や講演、ブログを通じた啓発活動にも取り組み、2018年3月小野梓記念賞を受賞した。大学卒業後に適応障害を発症し、同法人の活動から離れる。

半年間の闘病生活を経てフリーランスとして活動を再開。現在はウガンダのローカルNGOと協働し、最貧困地域での公衆衛生改善プロジェクトを実施中。
他にも講演やブログ、YouTube、オンラインサロンの運営にも携わるなど、「フリーランス×国際協力」という新しい働き方を追求している。

著書『世界を無視しない大人になるために』

原貫太さんのブログはこちら→https://www.kantahara.com/

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